令和元年9月26日
【自公連立20年に思う
 

 

 皆さん今日は!猛暑もようやく収まり、朝晩は、秋の気配も感じられる昨今ですが、いかがお過ごしでしょうか。
 さて、10月5日には、「自公連立政権20年」の佳節を迎えます。「え!公明党が与党になるの?」、私自身びっくりしてからもう20年になるのですね。私達は、国民目線の公明党の政治を実現するためには、「与党になって、政策も予算も抜本的に変えてゆくしかない!」と決意を固めました。
 しかし、自民党との連立は、決して平坦な道程ではありませんでした。幾つもの山河を乗り越えて今日の佳節を迎えられましたこと、一重に党員・支持者の皆様の、暖かいご支援の賜物と衷心より感謝を申し上げます。
 今回は、皆様とともに「自公連立20年」の越し方を振り返り、新たな出発をしたいと思います。


1、自公連立政権の誕生
  1999年(平成11年)10月5日に自公連立政権が誕生したのですが、内外ともに厳しい状況の下で出発致しました。当時の主なご指摘を上げてみました。
<内外の反応>
 (党員・支持者)
・昭和39年結党以来、非自民・反自民の公明党。突然「与党」と言われても、理解できません。
・自民党に飲み込まれ、社会党のように消滅してしまう。
・私達が作ってきた公明党を潰すのか。
(世論の評価)
・公明党が与党になって一体「何がしたいんだ」。
・創価学会の利益のために変なことをするんじゃないか。
・公明党は野党として政府の批判勢力で十分。与党として政権を担当させるべきではない。
・政教一致。
<連立20年後の評価>
・与党に公明党がいるから安心だ。
・自民党にブレーキをかけられるのは公明党しかいない。
・公明党が与党にいればこそ国民目線の政治が実現できる。
<自公連立の意義>
・連立20年は、日本の憲政史上初めて。
・政治の安定→数の安定と質の安定に寄与。
・自民党塩崎元厚生労働大臣の話。→「新薬が発見された場合に、自民党は『この新薬をどうしたら日本全国に売りさばくことが出来るか』という生産者目線で販売ルートを考える。公明党の皆さんは、同じ新薬を見ても『これ副作用は無いのか?』という消費者目線で考える。この生産者目線と消費者目線というベクトルの違う政党が一緒になって政治をやるところに政治のウイングが広がる。」と。まさに言い得て妙ですね。自民党は、国家、大企業、大都市といういわば「統治者」の目線。公明党は、庶民、中小・零細企業者、地方という「非統治者、弱者」の目線。今まで、互いに見えないもの、足りないものを上手く補い合い、調整する事によって政治の質が広がり安定します。
<国民目線の政治の実現>
それでは、公明党が国政に参加する事によって、国民目線の政冶がどのように進んだかを見てみたいと思います。
・政労使会談の実施や最低賃金法改正→賃金の値上げを実現。
 *政労使会談→政(政府)労(労働者・連合)使(使用者・経団連)の3者が、賃金値上げのために定期的に官邸で会合。
・幼児教育、高等教育の無償化。
 *教科書無償配布にも匹敵する公明党のヒット
・全世代型社会保障制度や社会保障検討会議の設置。
・軽減税率の実現→「安倍総理、公明党の主張を優先し自民党税制調査会長の首を取る」。
 *軽減税率の対象をめぐって自公の大論争。自民→生鮮食品のみ、3000億円。公明→加工食品も含め1兆円。安倍総理公明案を容れ、これに反対する自民税調会長を解任。
・平和安全法制→「安倍総理、公明党の主張を入れ安保法制懇の梯子をはずす」。
  *後記、「平和安全法制」参照

2、自公連立の危機
  「野党転落」と「平和安全法制」は、自公連立にとって大変な危機でした。
<野党に転落>
・2009年(H21年)8月の総選挙で自公大敗、野党に転落。
・太田代表、北側幹事長、冬柴前幹事長始め、小選挙区全滅。
・(当時の自民党)政権の末期症状。「消えた年金問題」で国民の不信。加えて「事務所費問題」で次から次へと大臣が辞任に追い込まれる。農水大臣「絆創膏事件」、「何とか還元水大臣の自殺」、世界に発信された財務大臣の「酔っ払い記者会見」等々。
・(当時の民主党)ポピュリズムの最たるもの。偽りのマニフェスト「月額7万円の最低保証年金の支給」「事業仕分けで16兆円のムダの捻出」「子供手当て月額2万6千円の支給」「コンクリートから人へ」・・・国民うけの政策満載。
・選挙による「平成初の政権交代」「一度、民主にやらせてみたら」と言うメディアの盛り上がり。
<自民か民主か?路線問題>
・連立与党はあるが、「連立野党」はありません。自公連携は自然消滅となりました。そこで、今後公明党は、「自民党と連携して行くのか、民主党と連携するのか」と言う路線問題が発生。
・世論の多くは、公明党と民主党の政策が近いことから民主党との連携を求めた。しかし、公明党は、自民との連携を選択。爾来3年3ヶ月、民主党のマニフェストの偽りを国民に訴えて、2012年政権奪還しました。
なお、当時私が民主党に感じていた印象を上げれば下記*になります。
*民主党のマニフェストは偽り、破綻必至。
*民主党の政権運営→数の論理、最優先。少数政党は、従うのみ。
*ちなみに、政策面での自公の合意形成の方法→自民党、公明党の議員で構成される「与党政策責任者会」(与責)の了承が無ければ、政府提案の法律も自公各党提案の議員立法も国会に提出できない。与責の会議では、自民党と公明党の優劣は無く、対等の立場で合意形成が図られます。
・2017年10月、民進党は路線対立で4分5裂。無所属になった民主党代表岡田克也氏「2大政党を目指して自民党を出て20年。何のため自民党を出たのか分からない」と述懐。もしも、あの時民主党と連携していたら「裸の公明党」として政界を漂流。
<平和安全法制>
・2012年政権奪還後、自公連立は最大の危機。憲法第9条の解釈上「集団的自衛権の行使は是か非か」の論争。
・安倍総理→集団的自衛権の行使容認を目論み、総理の私的諮問機関として「安保法制懇」を立ち上げる。
・公明党→現行憲法の解釈上集団的自衛権の行使は許されず、あくまでも憲法9条の平和主義を守り、専守防衛に徹すべき。
・「安保法制懇」は、2013年5月に「集団的自衛権の行使は許される」との報告書を総理に提出。しかし、安倍総理は、この安保法制懇の提案を排斥し、公明党の「集団的自衛権の行使は許されない」とする考え方を採用。安保法制懇のメンバー、「総理に梯子をはずされた」と大いに怒る。平和の党、公明党の力を大いに発揮。

3、憲法改正問題
  日本国憲法第9条を含む憲法改正問題は、自公連立の最後のハードルです。
<憲法9条をめぐる改正圧力の強化>
○内的要因
・安倍総理、憲法改正問題を参院選の争点にし、選挙に勝利。
・総理「2020年改正憲法施行」を明言した。
・総理の任期満了が迫っている(2021.10)。
○外的要因
・トランプ氏の日米安全保障条約不平等発言。
 *日本に米国を守る義務は無いのは不平等。
・米国の「ホルムズ海峡有志連合」参加の呼びかけ。
 *日本は、原油供給の8割超を湾岸諸国に依存。
 *トランプ氏「米国は中東の石油に依存していない。」「原油輸入国である日本など、自国のタンカーは自国で防衛すべきだ」とツイッターで発言。

<自民党の憲法第9条の改正案と問題点>
○安倍総理の発言内容
 @「憲法第9条1項(戦争放棄)と2項(戦力不保持)を残したまま、自衛隊の存在を憲法上に明記する」。
 Aその理由→憲法学者などから今もなお「自衛隊は憲法違反だ」との指摘がなされている。このような状況は、命をかけて国民のために頑張っている自衛隊の諸君に申し訳ない。そこで、自衛隊を憲法上明記し違憲論争に終止符を打ちたい。
○自民党の9条改正案
 @憲法第9条の1項(戦争放棄)と2項(戦力不保持)の条文をそのまま残し、新たに「第9条の2」の条文を新設。
 A「第9条の2」→「前項の規定(戦力不保持)は、・・自衛の措置をとることを妨げず・・そのための実力組織として・・自衛隊を保持する」
○自民党案の問題点
 自民党案は、戦力不保持を定めた9条2項は残すものの、突き詰めれば「自衛のためであれば、陸海空軍その他の戦力を保持しても良い」という結論になる。
 @集団的自衛権行使容認の道を開く
 ・「自衛」とは何か の定義が不明。
 ・国連憲章51条→個別的自衛権のみならず、集団的自衛権も各国の「固有の権利」と位置づけられている。
 ・現行憲法の解釈上否定されている集団的自衛権の行使が、解釈上容認される道を開くことになる。
 A戦力不保持の原則の空文化
 ・特別法は一般法に優先する。
 ・新設の「9条の2」は、戦力不保持を定めた「9条2項」の特別法だとすれば、自衛のために必要ならば戦力不保持の原則は適用にならないことになる。
 ・その結果、「自衛」が一人歩きし、自衛隊の組織や権能が際限なく膨張し、終には9条2項で定めた戦力不保持の条文が死文化してしまう。
○結論
 @憲法改正は、いかなる議案よりも重要な問題であり、最も慎重な議論と合意形成が尽くされなければならない。
 A安倍総理は、9条の改正について「自衛隊の存在を憲法上に明記したとしても、フルスペック(制約の無い形)の集団的自衛権の行使は認められない」また「自衛権の行使については、憲法9条2項の戦力不保持の規定を残すことで、平和安全法制で定めた『武力行使の新3要件』の制約がかかる」。従って「憲法上の解釈は、今と何も変わらない」と説明されています。
しかし、「条文が変われば解釈が変わる」ことは、法律家の常識です。加えて自民党案には、安倍総理のこれの発言を担保する憲法上の措置が全く講じられていません。かえって前述のように「集団的自衛権行使容認の道を開き」、「戦力不保持の原則の空文化」を招くことを危惧せざるを得ないのです。

以上

公明党顧問 漆原 良夫



(註)
 日本国憲法9条
 1項・・「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」
 2項・・「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権はこれを認めない」